スカンジウム系及びハフニウム系においてまず準結晶の探索を行ったが、今回作製したいずれの合金系においても、準結晶相の生成は確認されなかった。 一方、アルミ系において、Al_<72.5>Re_<17.4>Si_<10.1>の組成で急冷試料においてTEM観察を行った結果、準結晶相の生成が確認された。そこでこの合金系において種々の温度で熱処理を行い、準結晶相の安定性を調べた。その結果、AlReSi系準結晶は熱処理を行うと1/1立方晶近似結晶に変態することが分かり、準安定相であると結論された。 以下では、この新しい近似結晶について電気物性を測定したので報告する。AlReSi近似結晶は格子定数が約13Åと比較的小さいにも関わらず、電気抵抗率の温度依存性は負であり、12Kと室温の抵抗率の比は2倍以上に達するという著しい非金属特性を有していることが分かった。また、この近似結晶の抵抗率は遷移金属濃度に敏感に依存し、遷移金属濃度が減少すると金属的な伝導に転化することが観測された。AlReSi近似結晶においてレニウム原子は正20面体クラスターを構成し、それが体心立方的に配列した構造をとっている。このことから、遷移金属濃度が減少すると、正20面体クラスターを構成するRe原子が部分的にAlやSi原子と置換するため、クラスターの対称性がくずれる。従って、近似結晶において観測された非金属特性は遷移金属クラスターの構成する正20面体クラスター中に伝導電子が束縛されることによって生じているものと結論された。
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