研究概要 |
W 合金や炭素繊維強化炭素材料などの超高温構造材料の実用化のために、優れた耐酸化コーティングが要求されている。耐酸化性の向上のためには、基材への酸素の透過を抑制する酸素透過防止バリヤー(Oxygen Diffusion Barrier : ODB)が重要であり、ODBとして融点2720KのイリジウムIrが最適である。しかし、Ir自身の耐酸化性はあまり良くない。この点をふまえ、スマートマテリアル設計の観点から耐酸化皮膜としてIrAlおよびIr-Si合金を設計した。設計では、酸化により「ODBとなるIr連続層とそれを酸化から守るAl_2O_3またはSiO_2層を生成し,かつこれらが自己修復的機能を有する材料」になると考えられた。実験の結果、IrAlは酸化するとIrAl-Ir-Al_2O_3の3相領域に入るため(2IrAl+3O_2→2Ir+2Al_2O_3),IrAlは酸化によりIr相とAl_2O_3相を生成することがわかった。一方、Ir-Si系に関しては,Ir-25〜50mol%Si合金を作製し、示差熱分析を行った結果,1600-1760K程度に液相を含む反応があり,このためIr-Si2元系合金を超高温用皮膜として用いることは困難であることを明らかにした。以上より,Ir-Al合金がスマートODBとして有力であることを示し、プロセスの検討および第三元素添加による改良を試みた。プロセスとしては、素粉末からの反応ホットプレス法によるとわずかにAl_2O_3の混在したほぼB2単相の合金を作製できた。したがって、反応ホットプレス法は皮膜作製に必要となる溶射粉末やスパッタターゲット材などのIrAl単相合金の作製に有効な手法である.IrAlの改良のための添加元素としてB2安定性を高めAl_2O_3生成能を向上させると考えられるFe,Co,Niを添加し、酸化挙動を調べた結果、特にNi添加とCo添加合金で重量変化が激減し、IrAlの耐酸化性を大きく向上させることを明らかにした。しかし、これらの元素添加はODBであるIr連続層の形成能を低下させるため、数mol%程度の添加量で最も良好な耐酸化性と目的の耐酸化多層被膜構造が得られることを明らかにした。
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