研究概要 |
前年度は,酵母懸濁液を処理対象として濾過助剤のケイソウ土をボディフィードした濾過を行い,得られた混合ケークからケイソウ土を再生利用する手法を確立するとともに,濾過速度の測定結果から,ケイソウ土の添加量には最適値が存在し過剰な添加は濾過速度の低下を引き起こすことに繋がることを明らかにした。以上の研究成果に基づき,本年度はボディフィード濾過助剤を有効に利用するための最適ボディフィード量の推定法について検討した。 最適ボディフィード量の推定法を構築するためには,ボディフィード濾過における濾過速度を支配する混合ケークの構造を定量的に明らかにする必要がある。そこで前年度に引き続き,圧縮性ケークを生成する酵母とほぼ非圧縮性として取り扱うことのできるケイソウ土を試料に用い,これらを混合した懸濁液の定圧精密濾過を種々の条件下で行い,その実験結果とケーク濾過モデルに基づき,濾過ケークの内部構造を決定づける空隙率ならびに濾過比抵抗の2つの重要な特性値を算出した。この基礎データに立脚し,非圧縮性ケークに対して従来提出された混合充填モデルを発展させ,圧縮性ケークにも適用できる混合充填モデルを新たに構築した。このモデルを用いた解析により,ボディフィード濾過における種々のケイソウ土分率,操作圧力での濾過速度が,ケークの圧縮性を考慮することにより良好に計算できることを示した。さらに,ボディフィード濾過における濾過助剤の最適添加量が決定できることも明らかにし,前年度に求めた実測データとほぼ一致する計算結果が得られた。混合充填モデル中には2成分の混合作用を表すパラメータが含まれており,圧縮性スラリーの濾過における濾過助剤の選択や濾過操作条件の選定には,これが一つの指標になるものと推察される。 本研究の手法や得られた結果は,単にボディフィード濾過だけでなく,工業的に重要な2成分の微粒子からなる懸濁液の濾過全般の操作において,有益な指針を与えるものと考えられる。
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