研究概要 |
本研究では,生体適合性であるポリウレタン発泡体(PUF)スカフォルドおよび生体分解性のグリコール酸と乳酸の共重合体であるPGLAスカフォルドを用いて、肝細胞組織体の形成と高密度化を図る検討を行い,インプラント型人工肝臓開発への利用の可能性を検討した。 1.PUFスカフォルドを用いた高密度肝細胞組織体培養法の確立 PUFに高密度の肝細胞を固定化させる方法として遠心播種法を確立した。この方法により単位PUF当りの細胞固定化密度は約1×10^7個/cm^3となり,昨年度までのPUFに細胞懸濁液を滴下させて細胞を固定化させる方法の約6倍の高密度化が達成できた。また,このように肝細胞を高密度に固定化したPUFを旋回培養することによって、肝細胞は球状組織体(スフェロイド)を形成し,低密度下の場合と同等の機能発現をすることを示した。 2.多孔質PGLAスカフォルドの作製 粒径250〜500μmのNaClにクロロホルムに溶解させたPGLAを流し、クロロホルムを除去後、水中でNaClを溶解させて粒径250〜500μmの多孔質PGLAを作製する方法を確立した。 3.多孔質PGLAスカフォルドを用いた肝細胞組織体培養 上記2で作製した多孔質PGLAで肝細胞を培養した結果、組織体を形成しない部分もあったが,部分的にはスフェロイドのような肝細胞組織体が形成された。しかし,PUFの場合に比べて肝細胞の固定化率が1/2と低く、今後は多孔質PGLAの連通孔や強度の確保,肝細胞組織体の誘導法を含めた検討が必要である。 4.PUF/スフェロイドのラットへのインプラント実験 上記1のPUF/スフェロイドをラット皮下に移植し、移植5日後に摘出して観察した結果,生体血管網に近い部分のスフェロイドは、その内部の肝細胞は壊死しているものの表層は生存していることが確認された。今後はスカフォルド内への速やかな血管誘導の検討を行うとともに移植したスフェロイドの増殖性や機能発現について長期的に評価することが必要である。
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