研究概要 |
分子鎖の異なる混合アルカンチオール自己集合膜や混合成分の一方の末端基をカルボキシル基等の官能基で置換した場合の混合チオール自己集合膜について、電気化学的に一方の成分を選択的に還元脱離させることで混合膜の2次元構造を明らかにすると共に、自己集合膜の形成過程を観察することを試みた。メルカプトプロピオン酸(MPA)とオクタンチオール(OT)の混合エタノール溶液に1時間浸漬させた金電極に対して電気化学的還元処理をすると、還元ピークが2つ分離して現れたことから、電極上に相分離した混合チオール自己集合単分子膜が形成されることが示唆された。走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて混合チオールで修飾された電極表面の構造を観察した結果、OTの被覆率が28%の場合には、短鎖長のMPAを選択的に脱離した後に20nm程度の島状に吸着したOTが観察されたが、83%の場合には28%の場合とは全く反対に、MPAが島状でOTはMPAを取り巻く海状構造となった。以上のように、MPAとOTの混合浸漬溶液中のOT濃度を変化させることで、電極表面修飾がナノスケールで制御できることを見出した。本内容は、"Spatial Distribution of Domains in Binary Self-Assembled Monolayers of Thiols having Different Lengths"by Hirokazu Munakata,Susumu Kuwabata,Yoshihisa Ohko,and Hiroshi YoneyamaとしてJ.Electroanal.Chem.に掲載されたが、自己集合膜の形成過程を観察には、更なる検討が必要である。
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