研究概要 |
本年度は,昨年度開発した,防撓材方向に面内圧縮荷重を受ける連続防撓パネルの最終強度算式を用いて,最終強度信頼性解析を実施した。 はじめに,既存の防撓パネルの最終強度算式としてDNV(ノルウェー船級協会)の強度算式を選び,本研究で開発した強度算式とDNVの強度算式より得られる最終壊強度信頼性を比較した。DNV算式では,防撓材深さが深い場合に,最終強度をかなり過小に評価する場合があり,この場合,得られる信頼性指標は最終強度以上に小さな値を示す。このようにDNV算式では,最終強度の推定値自体の問題があり,正しい信頼性を求めることはできない。一方,本研究で提案した強度推定法は,高い精度で最終強度を推定するため,精度の良い信頼性指標が得られる。 ところで,同じ防撓材形状でパネル板厚を増加していくと最終強度が上昇していくが,ある板厚を過ぎると,最終強度は逆に低下する。このように強度のピークを与えるパネル板厚が存在するが,最終強度信頼性のピークを与えるパネル板厚は,最終強度のピークを与えるパネル板厚に比べ小さくなることが分かった。 次に,本研究で開発した強度算式より得られる最終強度信頼性に対して,防撓材の初期捩れ量及び溶接による圧縮残留応力量のばらつきが及ぼす影響について調べた。その結果,初期捩れ量のばらつきの影響は小さいことが分かった。また,溶接残留応力のばらつきの影響は大きく,これを考慮することで,最大8%程度信頼性指標が低下する。ただし,防撓パネルが梁・柱として崩壊する場合には,溶接残留応力のばらつきの影響は小さくなる。
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