研究概要 |
本課題において、チトクロム系呼吸経路、オルタナティブ系呼吸経路及びエタノール発酵経路に着目して、イネの生殖生長期におけるこれらの代謝系の遺伝子発現を組織レベルで解析した。 チトクロム系呼吸経路の遺伝子として、COX1,COX2,COX5b,COX5c,COX6b,ATP1,ATP2を用いた。オルタナティブ系呼吸経路の遺伝子としてAOX1aを、エタノール発酵系の遺伝子としてADH1,ADH2,PDC1,PDC2,PDC3,ALDH2a,ALDH2bを用いた。芽生えや生殖生長期のイネの様々な器官より全RNAを抽出し、ノーザンハイブリダイゼーションを行った。呼吸経路の遺伝子だけでなくエタノール発酵系の遺伝子も、幼穂や出穂直後の穂にて発現量が多いことが明らかとなった。PDC,ADH遺伝子はそれぞれ少なくとも3コピー、2コピー存在するが、穂で発現している遺伝子コピーはPDC2,PDC3とADH1のみであることも明らかにした。これらの結果より、花芽器官では好気条件下にも関わらず、エタノール発酵が活性化されていることが示唆された。 イネ花芽器官における呼吸系遺伝子、エタノール発酵系遺伝子の発現の組織特異性を、さらに詳細に解明する目的で、in situハイブリダイゼーションを試みた。小胞子初期から開花期までの様々な時期の穂をサンプリングし、固定・包埋を行った。現在、各遺伝子のmRNAの局在部位を調査する準備を進めている。
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