研究概要 |
UDP-糖を可逆的に結合する能力がありゴルジ体膜に存在することよりヘミセルロース性多糖の合成に関与している可能性が示唆されているReversibly Glycosylated Polypeptide(RGP)と細胞伸長との関係を明らかにするため,ジベレリン処理により節間の急激な伸長能力を示す浮稲茎切片を実験材料に用いて研究を行い,以下の結果が得られた. 1 アラビドプシスから得られたRGP抗体を用いて,イネ節間中の伸長に伴うRGPタンパク量の変化を調べた.イネ節間中の可溶性タンパク質および膜タンパク質中のRGPのレベルは,節間の急速な伸長をもたらす浸水およびジベレリン処理によりほとんど変動しなかった.現在イネRGPタンパク質の抗体を作成中であり,これを用いて再調査する予定である. 2 イネRGP遺伝子(OsRGP)をクローニングした結果,イネにおいて二つのRGP遺伝子(OsRGP1,OsRGP2)が得られ,エンドウRGP(PsRGP1)との比較でOsRGP1では86%,OsRGP2では43%の相同性(アミノ酸レベル)が認められた. 3 OsRGP1の遺伝子特異的配列をプローブとして,この遺伝子の様々な器官での発現量を調べた.この遺伝子は,成長中の節間・幼葉鞘・根端で発現しており,節間では細胞の分裂組織と伸長部位で高い発現量が認められた.浮稲茎切片をジベレリン処理すると,処理8時間以降にOsRGP1のmRNAの蓄積が節間基部において認められた.以上の結果ならびに昨年度得られた結果より,OsRGP1遺伝子の発現は,イネの様々な器官の生長と相関があり,ジベレリンによって伸長が促進される節間組織での増大する細胞壁合成と関係があることが考えられる.
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