研究概要 |
今年度は,RT-PCRによるディファレンシャルディスプレー法を用い単離した,カイコの非休眠卵特異的と思われる遺伝子断片(534bp)のさらなる解析を行った.ホモロジー検索の結果,イーストのpre-mRNA splicing factor RNA helicaseとアミノ酸レベルで40%の相同性が認められた.休眠・非休眠卵それぞれの産下後0〜60時間でノーザンブロット解析を行ったところ非休眠卵産下直後にその遺伝子の特異的な発現が認められた.更に,RT-PCRにて同様に発現解析を行ったところ,非休眠卵では全て,休眠卵では12時間目まで特異的なバンドが確認された.その結果をもとに休眠卵で浸酸処理を施し胚子を活性化した時の本遺伝子の発現を追跡したところ,浸酸処理に伴った発現が確認された.これらの結果は,本遺伝子(遺伝子産物)が胚子の活性化に深く関与している事を強く示唆している.更に,完全長cDNAのクローニングを目指し,定法に従いその遺伝子断片をプローブとしてcDNAライブラリーからのスクリーニングを試みたが,発現量が弱いこともあり困難をきわめた.しかし,RACE法に切り替えたところ5′側(1.1kbp)は解析する事に成功した.一方,ゲノムサザンブロット解析から,本遺伝子はゲノム中にシングルコピーで存在している結果も得ることができた.RNAヘリケースA(RHA)は,cAMP-responsive element-binding proteinとCREB-binding proteinがコアRNAポリメラーゼIIとのコアクチベーターとして機能する際の仲介役として重要な役割を担っていることが既に明らかにされている.本RNAヘリケース様遺伝子断片もRHA同様NTP結合ドメインやヘリケースモチーフなどと相同性がある機能ドメインが認められたのでカイコの胚子発生初期において重要な役割を持つと考えられる.
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