研究概要 |
Sphingomonas paucimobilis SYK-6株は様々なリグニン二量体化合物をバニリン酸、プロトカテク酸(PCA)に分解し、さらに生じたPCAをPCA4,5-開裂経路によって代謝する。本研究では遺伝学的な知見のない主要な芳香環メタ開裂経路であるPCA4,5-開裂系の全容解明を目的とした。 昨年度、4-carboxy-2-hydroxymuconate-6-semialdehyde(CHMS)dehydrogenase(ligC)と4-oxalomesaconate hydratase(ligJ)の両遺伝子の一次構造、遺伝子産物の機能を明らかにした。本年度はリグニン分解におけるligCの役割とPCA4,5-開裂経路の最終段階を担う4-carboxy-4-hydroxy-2-oxoadipate(CHA)aldolase遺伝子(ligK)の一次構造、遺伝子産物の諸性質を調べ、PCA4,5-開裂系酵素遺伝子群の全ての構造と機能を明らかにした。 ligKは684bpの読み枠からなり、ligIの上流に同じ転写方向で存在した。この結果からPCA4,5-開裂系はligJABCとligK-ligIの2つの逆向きの転写単位から構成されると考えられた。大腸菌で高発現させたLigKを単一に精製し酵素学的諸性質を明らかにした。LigKは150kDaのホモ6量体と推定され、CHAに対するK_mは11.2μM、V_<max>は265U/mgであった。 ligCはバニリン酸の代謝に必須であることが示された。しかしligC破壊株はLigC活性以外にPCA4,5-dioxygenase(LigAB)活性も失っていた。一方、2-pyrone-4,6-dicarboxylate(PDC)hydrolase遺伝子(ligI)の破壊株がLigAB活性を有することからLigC反応産物のPDCがligAB発現の誘導物質であることが示唆された。
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