研究概要 |
多糖リアーゼは、多糖分子中のウロン酸を認識し、β脱離反応を触媒する。本研究は、多糖(アルギン酸,ゲラン,キサンタン)に異なる様式で作用するリアーゼの構造を解明し、多糖リアーゼ反応における構造的一般則を確立することを目的とする。各リアーゼについて以下の知見を得た。【アルギン酸リアーゼ】スフィンゴモナス属細菌は、エンド型アルギン酸リアーゼ(3種類:A1-I,A1-II,A1-III)とエキソ型オリゴアルギン酸リアーゼ(OAL)を持つ。αバレル構造を基本骨格に持つA1-IIIについて、部位特異的変異及び酵素-アルギン酸3糖の複合体のX線結晶構造解析を行い、その反応機構を解析した。A1-IIIのチロシン-246とヒスチジン-192がリアーゼ反応に必須であり、チロシン-246がアルギン酸のC5位のプロトンの引抜きと切断部位へのプロトンの供与を担っていることを明らかにした。硫安とポリエチレングリコールで調製したA1-IとA1-IIの結晶は、各々単斜晶系P2_1及び立方晶系P4_32_12の空間群に属した。現在、各結晶の構造解析が進行中である。オリゴアルギン酸にエキソ型で作用するOALは、硫安で結晶化した。【グランリアーゼ】枯草菌が生産するゲランリアーゼは、多糖ゲランを非還元末端より4糖単位で切断する(エキソ型)。本酵素は、263kDaの巨大な前駆体から翻訳後プロセッシングにより130kDaの成熟体に変換される。成熟体の大量発現・精製系を構築し、現在、結晶化条件を探索している。【キサンタンリアーゼ】多糖キサンタンの分岐鎖に作用する枯草菌キサンタンリアーゼ(分岐鎖型)の1次構造及び立体構造モデリング解析により、本酵素は、α/βバレル構造を持つヒアルロン酸リアーゼと類似しており、活性に必要なアスパラギン-194、ヒスチジン-246、チロシン-255がαバレル構造ドメインに存在した。以上の研究により、多糖リアーゼは、αバレル構造を基本骨格に持つスーパーファミリーを形成することが示唆された。
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