研究概要 |
老化色素リポフスチン中に存在している蛍光物質の生成には、脂質過酸化産物の一つである4-hydroxy-2-nonenal(HNE)によるタンパク質のリジン残基修飾が関与しているといわれている。我々はすでに、HNEとリジンとのモデル反応から蛍光物質を単離し、その化学構造が2-hydroxy-3-imino-1,2-dihydropyrrole derivative(HIDP)であることを明らかにしている。平成11年度では、このHIDPをタンパク質レベルにおいて検出する目的で、HNE修飾タンパク質を酵素により加水分解し、それをHPLCで分析した。検出には、インテリジェントマルチチャンネル検出器と蛍光検出器を用いた。しかしながら、生成量が微量のため検出には至らなかった。そこで平成12年度では、HIDPを特異的に認識するモノクローナル抗体の作成を行い、それを用いたHIDPの免疫化学的検出方法の確立を検討した。まず初めにHNEとリジンとの反応から抗体作成に必要量のHIDPを調製し、これをキャリアタンパク質(keyhole limpet hemocyanin,KLH)に結合させ、これを抗原としてマウスに免疫した。KLHへのHIDPの結合にはカルボジイミド法とマレイミド法を検討したが、マレイミド法の方が結合効率が高かったので、こちらを採用した。免疫後、HNE修飾タンパク質に対する抗体価の上昇がみられたので、マウスの脾細胞とミエローマ細胞を細胞融合させ、HIDPを特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマを得た。そこでこの抗体を用いて、銅イオンで酸化させた低比重リポタンパク質に対してウェスタンブロッティングを行ったところ、陽性反応が認められた。さらに、ヒト動脈硬化病巣に対して組織染色を行ったところ、これについても陽性反応を示した。
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