研究概要 |
初期ノジュリン遺伝子は根粒菌のマメ科植物への感染初期に宿主植物において発現する一群の遺伝子であり,近年VA菌根菌の共生過程においても発現することが明らかとなった。本年度は,この初期ノジュリン遺伝子プロモーターとβ-グルクロニダーゼ(GUS)レポーター遺伝子との融合遺伝子を有するトランスジェニック植物を作成し,これを用いてVA菌根菌共生過程における初期ノジュリン遺伝子の発現を組織化学的染色により解析し,共生シグナル因子の存在について検討した。 エンドウおよびダイズのゲノムDNAを鋳型としてPCR法により初期ノジュリン遺伝子PsENOD12Aのプロモーター領域をそれぞれ増幅した。得られたDNA増幅断片を植物形質転換用バイナリーベクター中のGUS遺伝子の上流に連結してプロモーター-レポーター遺伝子を作成した。これをアグロバクテリウム法によってマメ科植物のモデル植物として注目を集めているミヤコグサ(Lotus japonicus ecotype Gifu B-129)の胚軸に感染させて,その後,ゲネチシンによるカルス選抜,再分化を経て,独立数系統のトランスジェニック植物を得た。この植物の根にVA菌根菌Glomus mosseaeと根粒菌(未同定)を接種して,プロモーター活性化に依存するレポーター遺伝子発現が見られるかどうかを組織化学的染色により調べた。接種後,20日後にGUS染色したところ根粒菌接種区で根毛先端部から根毛基部に向かっている感染糸と思われる部分が青く染まっているのが観察されたしかし,VA菌根菌の根への侵入菌糸,樹枝状体などではGUS染色は観察されなかった。また,ミヤコグサへのGlomus mosseae感染・共生過程におけるLjENOD40-1,40-2およびLjCbp1の発現についてRT-PCRで調べたところ,接種後,3,5週目でコントロールに比べ,有意な発現が見られた。
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