研究概要 |
(1)伊那市試験地のアカマツ天然林内において,マツタケの子実体発生位置の調査を行った。子実体の発生位置から,マツタケのシロ(マツタケの菌糸や菌根の存在する部分)は楕円状に分布しており,長径が4.5m,短径が3.7mであると推測された。また,子実体発生位置の変化から,このシロの拡大速度は10〜15cm/年であると考えられた。 (2)ルートウィンドウによりマツタケのシロを観察した結果,マツタケのシロは5月から7月まで活発に伸長を続け,その後,菌糸体が白色から褐色に変化することが明らかにされた。菌糸体の伸長は,前年のシロの周辺から始まり,1年間で約10cmシロが伸長した。また,マツタケの菌糸体の分布域から,このシロの深さは約10cmであると実測された。 (3)マツタケの子実体直下から採取した土壌中のエルゴステロール量を測定し,シロのバイオマスを推定した。その結果,シロ土壌1cm^3当たり42.9mgの菌糸体が含まれているものと計算された。また,シロの動態調査により,シロの活性部位の体積は0.13〜0.17m^3と推測されたことから,シロの菌糸体重量は5.6〜7.3kg(乾重)と推定され,子実体を1本発生させるために90〜120gの菌体量が必要であると考えられた。 (4)試験地における外生菌根菌の子実体発生位置を調査した結果,マツタケのシロの内側や前年のマツタケ子実体発生位置などからのキチチタケやフウセンタケ属菌の子実体発生が見られた。一方,ルートウィンドウの観察においても,マツタケ以外の外生菌根がマツタケのシロに接する位置で観察された。マツタケのシロ周辺の土壌を採取して実体顕微鏡下で観察した結果,シロ内部には他の外生菌根は侵入していないことが確認された。以上の結果から,マツタケのシロ周辺には他種の外生菌根菌が存在するものの,これらの菌はシロの内部には侵入せず,シロに接して分布しているものと考えられた。
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