研究概要 |
環境問題および資源の有効利用の点から木製品の有利性を論じるとき,その炭素ストック性が強調される傾向にある.この主張は木製品が物理的寿命を全うすることを前提としているため,使用者によって規定される心理的寿命と生産者が設定した物理的寿命は必ずしも一致しない.本研究は「木製品の心理的寿命の客観的評価の実現」を目指して,木製品の第一印象および記銘性に影響する諸因子を,心理応答および生理応答計測によって抽出することを目的とする. 1)そもそも我々は,身の回りの木材や木製品の存在をどのくらい正確に把握しているのだろうか?そこで,木材部分の割合が既知の住宅内装画像(インテリア画像)を種々用意し,見た目の木材率(心理的木材率)を調査した.その結果,我々は意外なほど正確に木材の存在量を見積もれることがわかった.また,柱や梁,桟など木材が軸的(線的)に使われている場合には,木材量評価のばらつきが大きくなる傾向が見いだされた. 2)上記の知見をさらに系統的に究明するために,広さや調度品は同じで,内装部材として用いられる木材だけが種々変化するインテリア画像をコンピュータ・グラフィックスで表現し,これらの心理的木材率を調査した.調査票を用いた調査においても,ヘッドマウンテッドディスプレイを用いた調査においても,我々は木材量を概ね正確に把握していることが明らかになったが,木材量が多いほどその内装が好ましいわけではなく,適度な木材量とともにその使い方(面的か,軸的かなど)も考慮する必要があることがわかった.今後,木質インテリアのデザイン性評価に使用可能な要因を抽出し,これを数量表現するための手法を考えるべきといえる.
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