研究概要 |
粘液胞子虫の宿主侵入機構:96穴マイクロウエルプレートを用いて魚類体表粘液の段階希釈系列を作製し、放線胞子(コイの結合組織寄生性Thelohanellus hovorkai、サクラマスの神経系寄生性Myxobolus arcticus)と各粘液(コイ、キンギョ、サクラマス、ベニザケなど)を反応させて最適条件を検討した結果、粘液のタンパク量が0.2mg/ml以上で極糸弾出率および胞子原形質放出率が安定した。また、T.hovorkaiはコイの粘液に特異的に反応したが、M.arcticusでは魚種間の差はなかった。ある種の糖鎖と特異的に結合する7種類のレクチン(ConA,DBA,PNA,SBA,UEAI,WGA,RCAI)を添加して反応を阻害する実験において、いくつかのレクチンでは阻害効果が見られたが、粘液の状態により阻害率が変動した。これらの結果は、放線胞子が魚類体表粘液中の特異的な糖鎖パターンを認識して宿主魚に侵入することを示唆するが、糖鎖構造は粘液中に存在する他の因子、例えば糖加水分解酵素などの影響により変化しやすいと考えられた。In vivo感染実験の結果と合わせて、この粘液における糖鎖構造の変化は放線胞子の侵入を回避するための一種の生体防御反応としても解釈された。 微胞子虫の宿主侵入機構:アユのグルゲア症原因微胞子虫Glugea plecoglossiのDNAを特異的に検出するin situハイブリダイゼーション法を開発し、in vivoにおける初期ステージを検査した結果、胞子が宿主上皮の細胞と直接接触して極管を弾出することが発見された。さらにin vitroの実験により、G.plecoglossiがFHM細胞には侵入したものの感染率が非常に低いこと、さらに、アユの体表粘液との接触によっては極管が弾出されないことが明らかとなった。以上の結果、微胞子虫の宿主侵入は粘液胞子虫とは異なる別のメカニズムが存在することを示唆する。
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