研究概要 |
本研究は海産微細藻類5種について,代表的な解毒物質の1つnonprotein thiol (グルタチオン及びシステイン)の含量を測定し,さらにHgに対する感受性との因果関係を検討した。 【実験材料】 プラシノ藻類Tetraselmis tetrathele,紅藻類Porphyridium purpureum,ハプト藻類P1eurochrysis carterae,Isochrysis sp,Pavlova sp 【実験結果】 1 ペプチドの分析 TetraselmisにおけるHg処理後のnonprotein thiolをフローサイトメーターと蛍光色素5-CMFDAを用いて観察した結果,Hg処理後30分以内に細胞内のnonprotein thiolが減少することをみとめた。また,Hgと結合する物質を調べた結果,GSHの他に新規の重金属結合性ペプチド,Arg-Arg-Gluを見いだした。 2 チオール濃度の測定 5種の微細藻類においてシステインとグルタチオンの細胞中の濃度を測定した。その結果,システインは0.66-12.0mM,シスチンは0.65-2.52mM,システインとシスチンのtotalでは1.70-14.5mMに分布し,グルタチオンではGSHが0.13-1.25mM,GSSGは0.15-0.26mM,GSHとGSSGのtotalは0.31-1.42mMに分布した。また,total濃度の高い種ほど還元型分子の割合が高く,細胞内の酸化ストレスの影響を受けにくいことが示された。 3 Hg感受性 5種の微細藻類において,Hg処理による細胞の状態変化を,蛍光色素FDA染色を用いて測定した。その結果,処理後3hにおけるEC50は0.16-1.90μMであった。また,EC50はnonprotein thiol濃度と高い相関を示し,nonprotein thiol濃度が高い種ほどHgに抵抗力を持つことが初めて示された。
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