研究概要 |
本研究では,先物市場を利用した価格変動リスクのヘッジ戦略について,現物価格および先物価格の変動における非線形性を把握できる二変量GARCHモデルを用いて分析をおこなった.分析対象としたのは,東京工業品取引所に上場される金,銀,プラチナおよびパラジウムの4品目である. これら4品目の商品価格に対して,3種類の二変量GARCHモデルとともに,非線形性を考慮しないモデルも用いて,価格変動リスクの軽減効果を指標化する最適ヘッジ取引率を推計した. 分析の結果,対象とした4品目の先物価格と現物価格は,非線形の価格変動を呈していることが明らかとなった.しかし最適ヘッジ取引率の推計結果は,非線形性を考慮したモデルと考慮しないモデルとでは,大きな相違を見出すことができなかった. また本研究では,わが国の農産物先物市場における代表的な商品である米国産大豆と,その先物価格形成の要因として大きな影響を持つと考えられるシカゴ商品取引所の大豆を対象に,両市場の大豆先物価格間のリンケージの存在と影響の大きさについて,定量的な分析をおこなった.その結果,特にシカゴ市場の期近物価格が,わが国の期先物価格の形成に大きな影響を及ぼすことが確認された.
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