研究概要 |
本研究は「稲作不安定」期と呼ぶ現局面において,水田作を中心とする農業経営や営農集団がいかなる経営の複合化・多角化の方向を模索しつつあるのか,東北地域を対象にその実態を把握し,新たな局面における農業経営の複合化・多角化の特質や意義,論理を実証的に明らかにしようとするものである。こうした観点から平成12年度は福島県原町市を事例として水田農業の組織化・複合化の実態と論理を明らかにすることに主眼を置いた。その概要は以下の通りである。 (1)地域概要:福島県原町市高地区は福島県浜通り北部(相双地域)に位置する平坦な水田地帯である。高地区は'93年に受益面積約80ha・受益戸数101戸の大区画ほ場整備事業を導入し,'97年に完了している。この基盤整備を契機として「高機械共同利用組合」(構成員9名,オペレーター4名)を作業受託の担い手とする集団的土地利用(移植稲作・乾田直播稲作・大麦転作の1年ブロックローテーション)を実現している。 (2)複合化の動向:高機械共同利用組合のオペレーター4名のうち3戸が中心となって'94年に「高温室利用組合」を設立し,水耕栽培施設を利用したトマト栽培を開始した。'99年の作業日誌による集計結果では導入事例農家(稲作7ha,トマト施設15a)の機械利用組合への年間出役時間は610時間であるのに対して,トマト栽培に要した自家労働力投下時間は2,085時間にのぼる。経営的にもトマトが首位部門になりつつある。 (3)組織化・複合化の特質と展望:機械利用組合のオペレーター経営に集約的な複合部門が導入・定着するに伴い,稲作の個別規模拡大(借地等)に限界感が発生している。現在の任意組織の法人化(特定農業法人化)を図ることによって生産効率化の追求と幅広い地域農家の子弟の参入を促し,次世代の担い手を確保することが期待されている。
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