研究概要 |
1.農家が直播稲作導入を判断する過程に関する検討 大規模稲作農家が新技術としての直播の導入を判断する過程を考究し,実際の事例を用いて検証した. 農家が直播の導入を判断する過程は,必要性を前提として,1)春先の省力化で所得機会が増大できる場合に直播を必要だと発想する(発想段階),2)地域条件から導入が可能と判断する(可能性判断段階),3)直播の経済性を評価し,特に最大のリスクである「収量が激減する危険性」が回避可能と判断する(経済的評価段階),の3段階に区分される.このうち最大の障壁は直播技術の困難さによる収量激減の危険性と考えられる. 2.直播稲作の定着条件に関する考究 直播稲作の導入・定着の是非は営農主体である農家が判断すべきであるとの観点で,直播面積が多い条件を4タイプにわけ,それぞれの定着条件を面積の推移に注目して考究した.面積変化を市町村単位で見れば大勢の把握は可能であり,また定着のためには農家自身が直播に必要性を感じて導入を判断することが重要なことが示唆された. 3.水稲湛水散播での播種深度に関わる諸因子 湛水散播は省力的だが播種深度が制御しにくい.その播種深度に関わる諸因子について整理・検討し,田面の硬度よりも湛水の方が影響が大きいこと,均平技術を鑑みると,湛水散播では播種深度は制御しにくいことを示した.なお,種籾の質量についてはさらに検討を要する. 4.代かき排水中のSSに関する考察 代かき時のSS流出について検討した結果,排水中のSS濃度は田面水と同程度になりうること,SS流出量には排水口の垂直位置が関係すること,事例水田での土壌流亡は数μmであることが,また実験から,代かき時の湛水深が浅く,代かきが軽度かまたは念入りなほどSS濃度は低下することがわかった.よってSS流出の軽減には湛水深を浅くすることが有効で,そのためには均平管理が重要である.
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