研究概要 |
実験1.カルモジュリン(CaM)の役割:既報(Chan and Dukelow,1985;Leclerc et al.,1990,1992)によると,精子におけるCaM濃度およびCaMの特異タンパク質への結合性はキャパシテーションとともに低下することから,CaMはキャパシテーションに抑制的に作用していると推察されている.そこで,本研究では成分からキャパシテーション誘起因子を除去した媒液中で精子をインキュベートした際のCaM阻害剤の影響について検討した.予備実験においてCalmidazoliumとTrifluoperazineを用いたが,これらの薬剤は精子に対する毒性が強く,本実験での使用には不適切であった.そこで,比較的毒性の低かったW7(5〜10μM)を用いたところ,頭部間凝集精子率は著しく上昇した.この結果から,CaMは精子の頭部間凝集に抑制的に作用していると考えられる. 実験2.電位依存性カルシウムチャンネル(VDCCs)の役割:昨年度の研究において10〜100μMの濃度では精子の頭部間凝集に有意な抑制作用を示さなかったL型VDCCs阻害剤のNifedipineとNitrendipineをより高い濃度(1mM)で添加したところ,頭部間凝集率は有意に低下した.他方,T型VDCCsの役割については,予備実験で精子に対する毒性が比較的少ないことが判明した阻害剤のPimozideとAmiloride(いずれも0.1〜10μM)を用いて検討したが,いずれも凝集精子率に有意な変動は認められなかった.以上の結果から,精子の頭部間凝集の発生においてVDCCsが機能している可能性が示唆されたが,L型阻害剤で抑制効果が認められた濃度は1mMと高く,またT型阻害剤(0.1〜10μM)には効果が認められなかったことから,VDCCsの種類を特定するには至っていない.
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