研究概要 |
ラット副腎髄質分離細胞ならびにラットクロム親和性細胞(PC12)でのレプチン受容体(Ob-R)の存在を確認し,カテコールアミン放出反応ならびに,細胞の分化に対する作用を検討した. (1)RT-PCR法によりOb-RのmRNAを検出したところ,ラット副腎髄質細胞ならびにPC12細胞において,シグナル伝達能の高いロングフォームのOb-Rの存在が確認できた.(2)これらの細胞においてレプチンによってMAPキナーゼのリン酸化が生じること確認された.これらの結果から,ラット副腎髄質細胞とPC12細胞に生理学的に活性のあるOb-Rが存在していることが明らかになった.(3)レプチン存在下でPC12細胞を培養することにより,樹状突起の伸展が有意に促進された.(4)また,レプチン存在下でPC12細胞を培養することにより,細胞内に含まれる,ドーパミンに対するノルアドレナリンの割合が有意に増加した.このことは,レプチンにより,ドーパミンβヒドロキシラーゼの活性が上昇したことを示唆している.(5)レプチンはNGFにより分化したPC12からのアセチルコリン,ATP,高濃度カリウムによるドーパミン放出反応には影響を与えなかった.(6)レプチンは,ラット副腎髄質細胞からのカテコールアミンの自発性放出やアセチルコリンによるカテコールアミン放出反応に対してなんら影響を与えなかった. 以上の結果より,ラット副腎髄質細胞とPC12細胞には機能的なレプチン受容体が発現していることが示唆された.おそらく,副腎髄質細胞のレプチン受容体は,カテコールアミン放出反応ではなく,主に,副腎髄質細胞の分化,増殖に影響を与えているものと思われる.
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