研究概要 |
近年、あいついで新型ブドウ球菌エンテロトキシン(SE)H型、G型、I型の存在が報告された。これら新型SEによる食中毒事例はいまだ報告されていないが、実験的には嘔吐活性が確認されており、食中毒原性は否定できないことから、これら新型毒素の診断方法の確立は重要である。本研究では、これら新型SEの分子生物学的および免疫学的検出法の確立を目的とし、以下の成果を得た。 A.新型エンテロトキシン(SE)の大腸菌発現系確立と抗血清の作成ならびにSandwich ELISAによる免疫学的検出法の確立 平成11年度に、seg,seh,sei遺伝子をクローニングした。さらに大腸菌発現系により精製組換え型SEG、SEHおよびSEIを調製してウサギに免疫し、抗毒素血清を作製した。平成12年度にはこれらの抗血清の特異性、反応性を確認するとともに、アフィニティクロマトグラフィーにより特異抗体を生成し、ホースラディッシュペルオキシダーゼを結合することにより、標識抗体を作成してSEG,SEH,SEI毒素を検出するSandwich ELISAを確立した。 B.PCR法による毒素遺伝子検出法の確立 平成11年度にseg、sehおよびsei遺伝子を検出するためのPCRプライマーを設計・合成し、multiplex PCRにより同時にseg、sehおよびsei遺伝子を検出する系を確立した。平成12年度は、このmultiplex PCRを既報のSEA〜SEEを検出するmultiplex PCRとあわせることにより、SEA〜SEI遺伝子を検出する系を確立するとともに、PCRの偽陰性を排除するために鋳型DNAの抽出法についても検討した。 以上、本研究により、新型SEの高感度な免疫学的検出法と遺伝子診断法を確立することができた。今後、本法を応用することにより、食中毒由来ブドウ球菌、食品由来ブドウ球菌の遺伝子型と毒素産生性について疫学的調査を進めることが可能となった。
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