研究概要 |
本研究の目的は、小動物疾患とくに猫のウイルス性疾患における自己抗体出現の有無の確認、そしてその機序および治療法について検討することである。 ・猫のウイルス性疾患における自己抗体の検出:猫のウイルス感染症とくに猫伝染性腹膜炎(FIP)における各種自己抗体の検出を行った。その結果、FIP自然感染猫では抗核抗体(ANA)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性例が存在することがIIF、ELISAを用いた系で確認された。そこで次に、ANCAとFIPの病態との関連性を検討するためにFIP実験感染猫におけるANCA抗体価の経時的な変動を観察したところ、ほとんどの症例で顕著な抗体価の上昇が見られた時期は神経症状や発熱などの臨床症状が現れ始めた時期と一致していた。また、高い抗体価を示した症例は急性経過をとり、臨床症状も激しく、安楽死後の病理組織学的所見でも重度の血管炎、非化膿性肉芽腫性病変が確認された。これらの結果は、ANCAが病態と相関して変動することを強く示唆するものであった。(Small Animal Clinics誌に掲載) ・自己抗体産生の機序に関する研究:ウイルス感染症と自己抗体産生との関連性について検討するため,まず抗体産生に関連の深いサイトカインであるイヌIL-4cDNAをクローニングした(J.Vet.Med.Sci.誌に掲載)。またT細胞の免疫反応を負に制御し,自己免疫疾患との関連が示唆されているcytotoxic T lymphocy te-associated antigen 4(CTLA-4)のcDNAをイヌおよびネコの両方でクローニングした(J.Vet.Med.Sci.誌およびImmunogenetics誌に掲載)。これらの因子について現在その発現と自己抗体産生との関連性について解析を行っている。またANAの認識する自己抗原(核抗原)は急性相蛋白の1種であるアミロイド蛋白等によって,通常処理されているが,この血清アミロイドA蛋白(SAA)についてもネコでそのcDNAクローニングと蛋白の発現を行い,ELISAを用いた測定系を開発した(J.Vet.Med.Sci.誌に掲載)。
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