研究概要 |
現在天然高分子を用いたキラルカラム充填剤の多くは糖残基中の全ての水酸基を同一の置換基で置換した形のホモポリマーで構成されている。分離の効率や対象混合物の範囲をさらに広げるための視点に立ち、1)位置選択的に置換基を導入したセルロース誘導体や、2)2種類の多糖誘導体をブレンドしたものをシリカゲルにコートして充填剤とした場合、これらの変化が実際のキラル識別能にどのような影響を与えるかを検証した。 1)では、2種の異なる置換基をグルコース残基に位置選択的に導入した誘導体を調製し、その置換基の種類や導入位置の違いによるキラル識別能の違いを検討することで、分離のメカニズムについての基礎的な知見を得る試みを行った。具体的には、アセチル基とベンゾイル基とが規則的にグルコース残基に導入されたセルロース誘導体2種、すなわち2,3-di-O-acetyl-6-O-benzoylcelluloseと6-O-acetyl-2,3-di-O-benzoylcelluloseを調製するとともに、それらの置換基の一方のみからなる誘導体2種を対照試料として調製した。次いで調製したキラル分離相をシリカゲルにコーティングして充填剤とし、ステンレスカラムに充填してキラルカラムを得た。キラル識別の結果は、中性のアリールアルコール類の分離では、置換度ばかりでなく置換基分布も分離の結果に大きく影響することが明らかとなった。特にC-6位に導入された置換基の影響が分離に大きな影響を及ぼしていた。しかし、この結果を、広範な対掌体混合物の分離に対して敷延して考えることは出来なかった。単一種の置換基で完全に置換したものの方が、良好な分離を示す場合も認められたからである。2)では、セルロースやアミロースの種々の割合のアセテート系ブレンドとベンゾエート系ブレンド、すなわち(1)cellulose triacetate/cellulose tribenzoate、(2)amylose triacetate/amylose tribenzoateを調製して充填剤とし、1)と同様にキラル識別能を検討した。各ポリマーの構成比とキラル識別能はほぼ一次の相関を示すことが認められた。
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