研究概要 |
本研究では,生体内結合組織の主たる構成成分であるコラーゲン細線維の形成メカニズムを解明することを目的として,培養骨肉腫細胞の産生するコラーゲン細線維を立体超微形態学的に解析している。前年度は培養骨肉腫細胞(NOS-1)の産生したコラーゲン細線維の形成過程を3次元的に明らかにし,コラーゲン細線維は先端先細りの短い線維が融合して長さと太さを増していくことを示した。本年度は,線維を構成するコラーゲン分子の種類と線維内での配列のしかたを解明した。 コラーゲン細線維をリンタングステン酸,ウラン等で電子染色をほどこして走査電顕の反射電子像で観察すると,透過電顕的と同様にD線を中心とする横縞構造を同定できるようになった。この横縞のパターンから細線維内のコラーゲン分子の配列方向(C端とN端の方向)を知ることができるので,約20本のコラーゲン細線維で線維の横縞のパターンを解析すると,NOS-1細胞によって産生,形成されたコラーゲン細線維は線維の端から端まで分子は同一方向を向いており,コラーゲン分子の配列の逆転現象(C端とD端が向き合う現象)は起こっていないことが明らかになった。さらにコロイド金をもちいた免疫走査電顕法で,産生されたコラーゲン細線維のほぼ全部がI型コラーゲンを含んでいることを明らかにした。これは正常骨組織のコラーゲン細線維の組成とほぼ一致している。コラーゲン細線維の原子間力顕微鏡観察では,コラーゲン細線維のD周期が正常コラーゲン細線維同様60-70mmであり,先細りの先端部においても周期性の凹凸が保たれていた。 最後に,研究代表者は今回の研究の過程で細胞の運動パターンや形態とコラーゲン細線維の産生との関係に興味を持ってきている。今後は細胞の運動パターンの詳細や細胞動態と形成されたコラーゲン細線維の方向との関係などを解明していく予定である。
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