本研究は、新生ラット摘出脳幹一脊髄標本において、その構成ニューロンの膜電位が呼吸関連活動を示し、かつ高炭酸ガス性アシドーシスに対して興奮性応答が呈することが明らかにされた橋背側に存在するノルアドレナリン作動性神経核である青斑核(Locus coeruleus:LC)が、同標本において脳神経や脊髄神経前根から記録される呼吸性神経活動の中枢性調節機構の中で果たす役割を検討するものである。具体的には、fast Na^+ channel blockerであるtetrodotoxin(TTX)1〜10μMを含む、あるいは含まない微量(30nl)の溶液をmicroinjectorを用いてLCに注入し、呼吸性神経活動の発火頻度(呼吸頻度)の変化を観察する。注入溶液には5% toruidine blueを溶解する。Microinjection前後で呼吸性神経活動の発火頻度を測定した後、標本を4%ホルムアルデヒドで固定し、脳幹の横断切片を作成する。切片をcresyl violetで染色した後、光学顕微鏡で観察し、microinjectionが正しくLCに対して行われていたことを確認する。現在までのところ、TTXを含む溶液の注入は、TTXを含まない溶液の注入に比べて、有意に呼吸頻度を減少させる(TTX:3.3±1.5min^<-1>から2.5±1.1min^<-1>/Control:3.3±1.5min^<-1>から2.9±1.2min^<-1>)ことが明らかとなった(第41回日本呼吸器学会総会/American Thoracic Society Annual Meeting 2001で発表予定)。引き続き、呼吸頻度のpH/Pco2の変化に対する反応性に及ぼす影響を検討する予定である。
|