研究概要 |
1)投与食塩水濃度とAV3V領域(脳室周囲器官含む)、視床下部室傍核(PVN)や視索上核(SON)等の各部位でのFos蛋白陽性細胞を指標とした検討:食塩水濃度を0.3M、0.67M、1.0Mと変化させると、終板脈絡器官(OVLT)、magnocellular components of PVN、SONは、0.3Mの高張食塩水投与時に有意なFos発現の増加を示した。一方、parvocellular components of PVNは、0.67Mの高張食塩水投与時に初めて有意に上昇した。これらの結果は、我々が以前に報告した意識下ラットにおける投与食塩水濃度と飲水行動、昇圧反応の反応閾値とほぼ一致するものであった(JANS.76,83-92,1999)。 2)バゾプレッシンV_1レセプターアンタゴニストの側脳室内投与の影響:アンタゴニストのOPC-21268(250μg/kg)を投与30分後に、0.67Mの高張食塩水を投与した。PVNではFos蛋白陽性細胞数が有意に増加した。これより、内因性のバゾプレッシン系が中枢内の経路を介して、視床下部のPVNのFosの発現に対してnegative feed back的に作用している可能性が示唆された。 3)中枢内のバゾプレッシン系がバゾプレッシン(AVP)、或いはオキシトシン(OT)産生ニューロンのいずれに影響しているかの検討:免疫組織化学的に、FosとAVP、或いはOT産生ニューロンとの二重染色によって検討すると、PVNでは両ニューロンともにFos蛋白陽性細胞の割合が有意に増加したが、SONではOTニューロンにおいてFos蛋白陽性細胞の割合が有意に減少した。これより、中枢内のバゾプレッシン系のfeed back機構にはそれ以外の、たとえば、オキシトシン系等のinteractionを考慮して、さらなる検討が必要と考えられた。
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