研究概要 |
平成11年度の本研究においてヒト大腸腺癌由来Caco-2細胞を透過性のある膜で区切られたCell Culture Insertを用いて培養し,小腸上皮細胞層を横切るオボアルブミン(OVA)の通過機構を観察した.その結果,1)インターフェロン-γ(IFN-γ)は小腸上皮細胞のOVAの透過性を亢進させる.2)OVAは小腸細胞を通過する過程でプロセッシングを受ける.3)プロセッシングの程度はIFN-γ処理によって促進される,という結果を得た.このことから,小腸上皮細胞を介するアレルゲンの輸送が,タイトジャンクションによる細胞間隙のリークだけではなく,むしろ上皮細胞内への取り込みと細胞内プロセッシングに依存していると考えられたので,平成12年度はCaco-2細胞内への食事性抗原の取り込み機序を検討するべく,次の検討を行った.フローサイトメトリーによるCaco-2細胞内のFITC-OVAの取り込みでは,1)FITC-OVAとのインキュベートにより,時間依存的に細胞内の蛍光強度は増強した.2)FITC-OVAは細胞表面に結合した後,細胞内に移行(蓄積)すると考えられた.3)IFN-γはFITC-OVAの細胞内蓄積を促進した.また,細胞内OVAの免疫組織化学的検出では,Caco-2細胞内へのOVA取り込みが観察され,IFN-γ処理により,OVAの細胞内蓄積が増大した. 以上の結果より,Caco-2細胞は食事性抗原を細胞内に取り込むこと,IFN-γはその過程を亢進することが示された.これらのことから,炎症性腸疾患時に粘膜下のリンパ球から分泌される炎症性サイトカイン類が,小腸粘膜の透過性を変動させるだけでなく,食事性あるいは腸内細菌に由来する抗原の小腸上皮細胞内への取り込み,および基底膜側へのペプチド放出を促進し,病態に影響している可能性が考えられた.
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