研究概要 |
<研究目的> 転写は、基本転写因子群によって行われる基本転写と、上流域結合因子群と基本転写因子群との協同作用による制御転写にわけて考えることができる。筆者は試験管内再構成転写系を用いて制御転写の転写活性化および抑制化機構の解析を行ってきた。その中で今までに報告されている再構成転写系における転写活性化は、因子の活性化ドメインの特異性が反映されないという点において、形質転換法等で観察される細胞内での転写活性化とは明らかに異なることを発見した。細胞内で観察される転写活性化機構を明らかにするべく、核抽出液の調製法から検討し、強力なVP16活性化ドメインに特異的なコアクチベーターの精製を試みた。 <実施状況> VP16の活性化ドメインをさらにN末部分(以下H1ドメイン;アミノ酸412-456)とC末部分(以下H2ドメイン;アミノ酸453-490)に分けた。2つのサブドメインは培養細胞を用いた一過性形質転換法による転写活性化様式に違いがあることから、ドメイン特異的な因子またはメカニズムを通じた転写活性化であると示唆された。従来のDignam法によらず、Low Salt法(Ikeda,K.& Meisterernst,M)により調製されたHeLaS核抽出液にVP16H1ドメインに依存的な活性が再現性よく観察された。コンベンショナルなカラムとアフィニティカラムを使用し、裸およびクロマチンDNA鋳型の試験管内転写系を用いてそれぞれのサブドメインを通じて作用するコアクチベーターを探索した。前者のドメインにはMediator ComplexであるSMCCが結合し裸のDNA鋳型からの転写を担う。後者のドメインにはSMCCとCBP/p300が結合しクロマチンDNA鋳型からの転写を担うことが明らかになった。
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