研究概要 |
本年度は前年度までに作成した画像解析ソフトウェアを利用してさらに良好な画像が得られるよう試みた.前年の問題点であった標本を傾斜して画像を入力するときに顕微鏡の対物レンズの作動距離が短くカバーガラスと対物レンズが衝突する問題は同倍率で作動距離の長い対物レンズが入手できたためこれを用いて画像の入力を試みた.材料は前年と同様のアスペルギルス肺炎のPAS染色標本,カリニ肺炎のグロコット染色,進行性核上麻痺の異常τ蛋白染色,卵巣MMMTのPTAH染色について行った。その結果,以前の対物レンズよりやや立体感が増したものの,やはり作動距離に限界があり,満足の得られるものではなかった.分解能を保ったまま対物レンズの作動距離を十分に長くすることは極めて特殊で高価なレンズを要し,レンズの設計から始めなければならず,本研究の最終到達目標である通常業務への応用が困難となるため,この方向からの改良は断念した.次にソフトウェア的に改良を試みた.ソフトウェア的に画像を仮想的に傾けて入力されるよう画像入力アルゴリズムを変更し画像の再構築を試みた.その結果,上記の方法よりも立体感は増加したが,仮想的に傾けた状態の入力は画像の各断面の入力時に移動する上下幅による画像の差異がノイズとなって現れ,画質の低下が著しくみられた.この原因は上下方向のサンプリング幅が広いため隣接する水平面の画像の差異が大きくこれがノイズの発生の原因と予想された.上下方向のサンプリング幅を狭くするためにはコンピュータの処理速度,メモリ,画像保存容量を増加させなければならなため,次年度以降はコンピュータの性能向上を図り,良好な画像の構築を試みたい.
|