研究概要 |
我々は様々な腎腫瘍においてvinculin蛋白の発現について免疫組織学的およびWestern blot法により検討し、免疫組織学的にはconventional renal cell carcinoma(RCC)では腫瘍細胞内にvinculin蛋白の発現は見られず、chromophobe RCC,collecting duct carcinoma,oncocytomaなど集合官の表現型を示す腎腫瘍においてvinculin蛋白は腫瘍細胞内に高い発現率を示し、vinculinが集合管の表現型を示す腎腫瘍の有益なマーカーになりうることを発見した。さらにconventional RCCにおいてもsarcomatoid transformationをきたしたものではvinculin蛋白の発現を示すことを明らかにした(Kuroda N,et al.Modern Pathology,13(10);1109-1114,2000)。さらにvinculinと結合する接着結合蛋白の一つであるpaxillinにおいてもchromophobe RCCとoncocytomaで高い発現を示し、vincullin同様、paxillinにおいてもconventional RCCやpapillary RCCと鑑別するのに有力なマーカーになりうるものと考えられた(Applied Immunohistochemistry and Molecular Morphology,in submission)。一方、osteopontinはchromophobe RCCで高い発現率を示し、間質の異所性石灰化やcollecting duct carcinomaの浸潤部周囲の線維化にも関与している可能性を示した(Kuroda N,et al.Journal of Urologic Pathology,12(2);79-91,2000)。 さらに稀な腎腫瘍であるjuxtaglomerular cell tumor(JGCT)において、レニンの産生の少ないものでは通常若年期に発生する本腫瘍も成人に発見されることがあり、免疫組織学的な検討により腫瘍細胞の細胞質内に血管新生因子の一つであるVascular endothelial growth factor(VEGF)やそそのレセプターの一つであるFlk-1の発現を証明し、autocrine mechanismを介してVEGFがJGCTの腫瘍の増殖を制御している可能性を示唆した(Kuroda N,et al.Pathology International,15;249-254,2000)。 染色体異常の調査についてはさらに検討をすすめ、予後との検討をすすめていきたいものと考えている。
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