研究概要 |
前年度までの結果をまとめ,"Mutation Analysis of the p51 Gene and Correlation Between p53,p73,and p51 Expression in Prostatic Carcinoma"と題する論文をthe Prostateに投稿した.minor revisionの後受理され刊行された. 今年度は,前年度に引き続き,前立腺癌の臨床例を用い,p51,p73各遺伝子のタンパク発現に関し検討した.p51遺伝子タンパクに対するpolyclonal抗体を作成し,ホルマリン固定,パラフィン包埋切片を用い免疫組織化学染色にて,前立腺癌細胞におけるタンパク発現につき検討した.癌組織においては細胞核内に比較的広範にp51の陽性所見が得られた.また非腫瘍性腺管および開質組織の一部にも陽性所見が認められた.明らかな有意差は認められなかったが,高分化型癌では,低分化型よりも若干陽性強度が高い傾向にあった.腺管の分化とp51タンパクの発現に関して検討するため,腫瘍分化が比較的明確な大腸腺腫を用い,同様にp51タンパクの免疫染色を行った.この検討では軽度から中等度異型を有する腺腫の表面部分にp51タンパクの陽性所見が得られた.他の実験結果によって大腸腺腫の表面部は,腺底部よりも増殖活性が高いことを突き止めており,腫瘍を含めた腺細胞の増殖とp51タンパク発現には何らかの関係があることが示唆された.p73に関しては市販のmonoclonal抗体により検索したが,明らかな局在は証明できなかった.
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