研究概要 |
【研究目的】これまで間質性肺疾患の研究は主に肺胞の上皮細胞や繊維芽細胞についておこなわれてきた。しかし、血管系に関する研究はほとんど行われていない。そこで、間質性肺炎における血管内皮細胞、特に毛細血管内皮細胞のthrombomodulin(TM)とvon Willebrand factor(vWf)の表現型に注目し、疾患でのこれらの因子の役割を明らかにすることを目的とした。 【結果】平成11年度の研究より、正常ヒト肺微小血管内皮細胞(HMVEC-L)、肺動脈内皮細胞(HPAEC)、皮膚微小血管内皮細胞(HMVEC-d)、動脈内皮細胞(HAEC)の発現様式がTMとvWfにおいて異なることが分かった。TMはHMVEC-L,HPAECで優位に、vWfはHMVEC-d,HAECで優位に発現した。さらに、間質性肺疾患ではTM優位な肺胞毛細血管がvWf優位な表現型に変わり、TMの発現が消失することが分かった。そこで、TM消失による細胞への影響を、アンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense ODN)を用い、検討した。実験には先ず、TM陽性の肺腺癌細胞株A549を用いた。この細胞株に正電荷リポソームでantisense ODNを導入したところ、A549の細胞増殖が抑制された。このことから、TMによって細胞の増殖が制御されていることが示唆された。現在、正常ヒト臍帯血管内皮細胞においても同様な実験を行っており、血管内皮細胞におけるTM発現の消失と細胞増殖の関与を検討中である。今後は、TM消失による細胞増殖への影響を血管内皮細胞においても確認し、TMがどのように細胞増殖を制御しているのか、その機構を明らかにしていきたい。また、TMに加え、vWfの疾患への影響も明らかにしたい。
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