研究概要 |
粥腫性動脈硬化性病変の破綻に至る脆弱性亢進のメカニズムを,細胞外マトリックスの分解に焦点をあてて検討した。ヒト動脈硬化巣内におけるゼラチン(コラーゲン分解産物)分解活性の局在について,昨年度発明し特許申請中(特許出願番号:特願平11-174826)のFIZ(film in situ zymography)を用いて解析,およびSDS gel zymographyを用いて分子種の同定を行った。分解活性の局在の確認の後,ゼラチン分解活性蛋白の産生細胞の同定のために免疫二重染色を施し,MMP-9の局在を同一組織切片上で証明した。一方,SDS gel zymographyで証明されるMMP-9は組織培養上清中に添加する薬剤の種類と濃度に応じて産生と活性化が変化することが判明した。その方法論的意義と臨床応用については現在論文投稿中である。(1)エラスチンの分解に関して動脈硬化巣内のMMP-12をin vitro,in situのRT-PCRおよび免疫組織化学で前年度までに証明した。上記の萌芽的ゼラチン検出システムで見いだされるMMP-9がエラスチンの分解能も有することからMMP-9の産生と活性化が血管病変の脆弱性を高めるkey enzymeであると結論づけた。現在エラスチンを基質に用いるin situ zymographyを開発中である。(2)動脈硬化性病変進展・破綻や腫瘍の脈管侵襲におけるエラスチン分解の寄与がゼラチン分解システムによるMMP-9の検出で再認識された。MMPs抵抗性のコラーゲン特にミクロフィブリルコラーゲン(VI型コラーゲン)の解析,MMP-9産生の薬剤感受性を含めた病変破綻に抵抗する治療応用は引き続き行うべき課題で,現在次年度科学研究費申請中である。
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