研究概要 |
リンパ球浸潤と非壊死性肉芽腫性炎症が葡萄膜に起こるという病理学的所見,眼底検査所見およびHLA-DR4と強い相関があることなどの共通性よりVogt-小柳-原田病(以下、原田病)と交感性眼炎は両疾患ともメラノサイトを標的とした自己免疫反応が発症に関与していると考えられている.今回,メラノサイト特異的抗原であるTyrosinaseのT細胞エピトープならびに血清中の自己抗体の有無を両疾患の間で比較検討し責任抗原部位を同定することを目的とした。 Tyrosinaseオーバーラッピングペプチドに対する末梢血リンパ球およびT細胞ラインの増殖反応により抗原性を検討した.原田病患者3名,交感性眼炎患者2名の末梢血由来リンパ球を用いたアミノ酸21残基長からなるオーバーラッピングペプチドに対する増殖反応はいくつかの候補エピトープは存在するものの共通するものはみられなかった.しかし交感性眼炎患者の2人に特定のペプチド(p111-131)に強い増殖反応がみられた.患者の一人より特異的T細胞株を樹立したところ、このエピトープは両疾患に相関のみられるHLA-DRB1^*0405に拘束性がみられた. 急性期患者血清中のTyrosinaseに対する自己抗体についてWestern Blot法により検討した.原田病患者2名の血清では、Tyrosinaseに対する自己抗体の存在が示唆されたが交感性眼炎患者2名については認められなかった。 結果として交感性眼炎患者間ではTyrosinase内のp111-131のペプチドで共通して反応性がみられ、この部分がHLA-DR4拘束性T細胞の活性化に重要な役割を果たし、発症に関わるエピトープである可能性が示唆された。しかし、原田病では反応がみられず、共通抗原性は示されなかった。逆にTyrosinaseに対する自己抗体については原田病患者ではTyrosinaseにその存在が示唆されるものの、交感性眼炎患者では確認できなかった。これらは原田病と交感性眼炎の発症には抗原性の認識について何らかの違いがみられるものと推定された。
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