(目的)膀胱癌のCISにおける遺伝子的変異を検索することを目的として、現在までに知られている代表的分子種のcDNAを含むcDNA arrayを用い解析を行った。 (方法)単一細胞からcDNA libraryを作成するプロトコールを参照し(Dulac C.、Current Topics of Developmental Biology、36、1998)、トリミングした新鮮凍結切片からcDNAを作成した。これらをアイソトープで標識し、cDNA array blotとハイブリダイゼーションを行った。CIS病変ならび対照としての正常粘膜には、術中迅速診断で用いた尿管断端の凍結切片を用いた。免疫組織化学については、パラフィン切片を用いて通常行われている方法で検討した。 (結果と考案)CISおよび正常粘膜をプローブとしたオートラジオグラフィーのフィルムを比較検討した結果、CISにおいてintegrin beta 3の発現が低下していた。免疫組織化学的検討にても、integrin beta 3の発現に差が認められ、p53陽性細胞とほぼ一致してその発現が低下していた。正常粘膜ではintegrin beta 3は傘細胞に発現が強い傾向があった。PCR法で得られたcDNAをプローブとして用いているため、バイアスがかかることが予想されたが、cDNA arrayによる検索は、微細な病変の遺伝子解析に有用であると考えられた。今後は、integrin beta3のdown-regulationが腫瘍化に際しどのように関与しているのか、またp53ファミリーに属するp73との関係についても検討してゆきたい。 ※今回の研究成果の一部は、平成12年4月の第89回日本病理学会総会で発表された。
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