研究概要 |
寄生線虫が分泌するプロテアーゼが、Th2タイプの免疫応答誘導に関与しているかどうかは興味がもたれるところである。そこで、寄生線虫である犬蛔虫及び旋毛虫の幼虫より分泌されるES抗原を用いてマウスを免疫し、その中に含まれるセリンプロテアーゼのTh2細胞分化に及ぼす影響について検討を加えた。非処理ES抗原で免疫したマウスと、PMSFまたは熱処理によりプロテアーゼを不活化したES抗原で免疫したマウスの免疫反応を比較した。熱処理した抗原により追加免疫を3回行い、最終免疫より1週間後にマウスより脾細胞を採取し、ES抗原刺激により産生されるIL-4,IL-5,IFN-γをELISAで測定した。 その結果IL-4産生は各群の間で差がみられなかったが、IFN-γ産生は、熱処理抗原及びPMSF処理抗原免疫群において、産生増強がみられた。また、熱処理群において、IL-5産生のレベルもやや上昇した。各個体におけるサイトカイン産生量の比を比較すると、非処理抗原で免疫した方が、PMSFまたは熱処理抗原免疫群よりIL-4/IFN-γ比が有意に高い値を示した。また、抗原特異的IgG2aのレベルは、熱処理抗原免疫群群において最も高く、非処理抗原免疫群において最も低い値を示した。それとは逆に、IgG1/IgG2a比及び抗原特異的IgEのレベルは非処理抗原免疫群で高い傾向にあった。非処理及びプロテアーゼ不活化処理した旋毛虫ES抗原で免疫したマウスを用いた実験においても、同様の結果が得られた。 これらの結果は、これまでに明らかにしたMesocestoides cortiメタロプロテアーゼを用いた実験とほぼ同様の結果であり、寄生蠕虫の分泌するプロテアーゼにより宿主の免疫系がTh2タイプにシフトする可能性が示唆された。
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