研究概要 |
CH12F3-2細胞と人工基質を用いた実験で得られた、サイトカイン刺激によりクラススイッチ組換え酵素が誘導されるという観察に基づいて、サイトカイン刺激により発現誘導される遺伝子がcDNAサブトラクション法を用い村松らにより単離された。その一つ、AID遺伝子の機能を調べるため、CH12F3-2細胞において強制発現を行なった結果、クラススイッチ組換えを促進する作用があることが判明した。さらに、AID遺伝子の生体における機能を解析するため、AID遺伝子を破壊したマウスを作成した。クラスイッチが起こる場所であるリンパ節の胚中心は存在していたが、血清中の抗体クラスを測定した結果、IgM抗体は正常化それ以上の濃度で検出されたのと対照的にクラススイッチを要するクラスの抗体(IgG,IgA)は検出されなかった。リンパ球を脾臓より単離し、LPSおよびIL-4あるいはIFN-γ刺激後の抗体産生を測定してもIgMの反応はあるがクラススイッチを要するクラスの抗体(IgG,IgA,IgE)は検出されなかった。AID欠損マウスにおいてはクラススイッチ組換えが完全に障害されていることが明らかとなった。また、意外なことに抗体の抗原に対する親和性を高める体細胞突然変異も抑制されていた。AIDはクラススイッチ組換えと体細胞突然変異におけるDNA切断反応を制御していると考えられる。AIDは構造上RNA編集酵素であるAPOBEC-1と類似しているので、RNA編集を介して組換え酵素の活性を調節している可能性が高い。AIDの標的となるRNAを単離することは組換え酵素の同定につながると考えられる。
|