研究概要 |
本研究は、地域を基盤とした包括的な生活習慣病予防対策を展開するため、健康診査受診者、および健康診査未受診者における生活習慣に関する実情を把握することを目的として実施したものである。大阪府S市にて平成10年度市民健診を受診した40歳以上の者(3,570名)、および昭和59年以来一度も市民健診を受診したことのない40歳以上の者(36,185名)から、無作為に4,618名を抽出し、郵送法による調査を実施した。有効回答者(2,573名)を、その受診状況から(1)平成10年度市民健診を受診した者(320名)、(2)市民健診の受診経験はないが、過去1年以内にどこかで健診を受診した者(1,556名)、および(3)市民健診の受診経験もなく、過去1年以内にどこの健診も受診していない者(697名)の3群に区分して分析を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 1)市民健診未受診・他の健診未受診群は、他の2群と比較して、勤務先の規模が「1〜4人」と回答した者の割合が、他の2群と比較して有意に大きかった。零細企業従事者における健診受診率は、大企業従事者のそれと比較して小さいことが多く報告されているが、本研究においても同様の結果が得られた。 2)市民健診未受診・他の健診未受診群は、各種がん検診を受診した者の割合、および血圧・コレステロールを測定した者の割合が、他の2群と比較して顕著に小さかった。市民健診未受診・他の健診未受診群に対する積極的な受診勧奨が必要であると考えられた。 3)市民健診未受診・他の健診受診群、および市民健診未受診・他の健診未受診群における適切な生活習慣の実施項目数の平均値は、市民健診受診群と比較して小さいことが示された。とくに女性においては、有意な傾向がみられた。市民健診未受診・他の健診未受診者に対する生活習慣改善を目的とした保健事業が広く展開される必要性があることが示唆された。
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