研究概要 |
変形性膝関節症(osteoarthritis of the knee:以下Knee OA)は、高齢者において有病率が高い極めて疾患と考えられているにもかかわらず、本疾患に関する疫学的アプローチは少ない。今回、Knee OAの発症要因を明らかにし、本疾患の発症要因に日英で差がみられるかどうかを検討することを目的として、日英両国で同様の手法を用いてcase control studyを実施した。 本調査は、英国の二つのhealth district(Portsmouth,North Staffordshire)において実施され、日本では和歌山県二地域(和歌山市、有田市)、及び大阪府泉南市において実施した。caseの定義は、調査の1年以内に対象病院を初診した45歳以上の男女で、整形外科医によりKneeOAと診断され、かつ調査期間中に手術(total knee arthroplasty,osteotomy,patellar replacement)の適応と診断されているものとした。controlは1caseにつき1人とした。caseと性、年齢(±2歳)をあわせ、caseの住所における住民台帳よりランダムに抽出した。調査はcase、controlとも同一の調査者が訪問し、本人の承諾をとった後に、対面聞き取り調査を行った。本調査にわける調査票は二国間で開発された物で、調査項目は職業、移動手段、スポーツ、趣味、たばことアルコールの摂取頻度、関節障害の有無、運動障害の有無、既往歴、月経状況など約60項目である。日本の調査では103ペアがすでに調査終了した。その結果、肥満(オッズ比3.0、95%CI 1.4-6.2)、手指のこわばり(オッズ比7.6、95%CI 2.0-27.9)、自転車に乗る(オッズ比2.3、95%CI 1.0-4.9)がKnee OAの発症要因となることが示唆された。一方英国の調査からは、肥満、膝の外傷の既往、Heberden's nodesの存在、仕事上でのしゃがみ動作が発症要因であることがわかった。以上よりKnee OAの発症要因は日英とも肥満、手指の障害、運動であり、似通っていることが明らかとなった。
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