研究概要 |
糖尿病患者における下肢切断は,糖尿病や足の管理が適切になされれば予防可能な合併症である.本研究では下肢切断の危険因子を検討する目的で症例対照研究を行った. 症例は1993年1月から1998年6月に慈恵医大附属病院,第三病院,柏病院の整形外科,形成外科で初回の下肢切断を行った患者のうち,切断時の糖尿病合併例の全例(42例)とした.対照は三病院の外来糖尿病患者一覧から年次毎に症例対照の比を1:4となるよう無作為抽出した(168例). 足の状態とフットケアに関し郵送にて質問票調査を行い,症例には下肢切断の1年前の状況を,対照にはそれに対応する時点の状況を質問した,各質問項目に関しステップワイズ変数選択により多変量ロジスティック回帰分析を行った. 下肢切断のリスクを有意に増大させたのは(カッコ内はオッズ比).歩行時疼痛(59.8,95%信頼区間4.5-793.2),皮膚の乾燥,ひび割れ(42.6,同1.3-243.4),創傷治癒遅延(7.6,同1.4-41.6),深爪(30.2,同2.6-354.3),爪にヤスリを使う(33.0,同2.0-554.1),および爪をはさみで切る(26.2,同2.1-319.5)がモデルに取り込まれた. 足の状態の分析では,歩行時疼痛や創傷治癒遅延など循環障害を示唆する症状ならびに皮膚の乾燥・ひび割れなどがリスクとして挙げられた.臨床的に見出しやすい徴候であり充分な注意を要する.また,フットケアに関しては,爪の日常的なケアについての項目がリスクとして見出され,患者指導の上で参考にすべきと思われる.
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