研究概要 |
我々は、レチノールからレチナールを介してレチノ酸を形成する2段階酸化経路を明らかにする目的で、レチノール、レチナール、レチノイン酸を同時に検出することを試みた。まず、Lanversらの報告したHPLC法(J Chromatogr B Biomed Appl685;233,1996)を応用した(Yokoyama H,Matsumoto M,Shiraishi H et al.Alcohol Clin Exp Res24 26S-29S)。しかし、その方法では特にレチナールの分離が不十分であることが判り、レチノール、レチノイン酸の分離を損なわず、レチナールも十分分離できるHPLC法を開発した(Miyagi M,Yokoyama H,Shiraishi H et al.J Chromatogr B Biomed Appl投稿中)。その方法を用いて、生体にレチノールからレチナールを介してレチノ酸を形成する経路があることを証明し、エタノールやアセトアルデヒドがその経路を阻害することを証明した(Shiraishi H et al.FEBS letters投稿中)。さらに、その酸化経路の2段階目、即ち、レチナールからレチノイン酸を形成する経路は、特にアセトアルデヒドによって阻害されることを示した (Shiraishi H et al.Alcohol Clin Exp Res印刷中)。エタノール、およびその酸化産物であるアセトアルデヒドが、生体のホメオスターシスを保つのに重要とされるレチノイン酸産生を阻害するという結果より、我々は、アルコール性臓器障害の新しい機序を想定することができた。本研究は、主にラットの食道粘膜で検討された。従来の目的であった伊東細胞における同系の検討は、現在進行中である。
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