研究概要 |
低体温療法の虚血再灌流性末梢神経傷害に対する保護効果については,これまでの実験成績から,時間内に28℃の局所低体温を導入すると、十分な神経保護効果が認められることをあきらかにしてきたが,再灌流時の局所低体温では,ある程度の神経保護効果を認めるものの,虚血時間内の低体温療法に比べると,その保護効果は不十分であった.本研究では,再灌流時の局所低体温療法を長時間(6時間以上)施行することにより,その保護効果を検討することを目的とした. まず,従来のモデル同様3時間虚血のモデルにおいて,再灌流後,28℃の局所低体温を0時間,3時間,6時間,9時間施行し,各群での保護効果を比較検討した.その結果,3時間,6時間の局所低体温では,電気生理学的指標,病理学的指標のいずれでも,有意の保護効果を得られなかった.さらに9時間の局所低体温群では,実験終了後,1週間の死亡率が高く十分な比較検討ができなかった. 次に6時間の局所低体温群において,24℃,20℃とさらに低体温を試みたが,24℃では,有意な改善はなく,20℃群では死亡率が高く十分な検討ができなかった. 上記のように再灌流時の局所低体温療法は,長時間に及ぶ場合あるいは極端な低体温の場合は全身的に無視できない合併症を引き起こす可能性が示唆された.再灌流時の低体温療法は,実際の臨床応用となると問題があると考えられる. 現在,低体温療法によらない神経保護療法として,再灌流時の炎症細胞の作用を抑制する目的で,免疫抑制剤による治療を考えている.そのの根拠として,我々はこれまでに,虚血再灌流性末梢神経障害において,再灌流時に炎症性サイトカイン(IL-1,TNF-α)のmRNA発現が増加することを報告した.これらの知見は免疫抑制剤,抗炎症療法の臨床応用への可能性を示しており今後の研究課題としたい.
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