研究概要 |
本研究の目的は,高コレステロール血症(HL)患者の血小板由来一酸化窒素(NO)生成が低下しているか否かを検討することである.さらに,HMG-CoA還元酵素阻害薬が高コレステロール血症患者の血小板由来NO生成に与える影響を観察し,HLと血小板由来NO生成の関係する機序を検討することである.平成11年度は高コレステロール血症を含む冠動脈危険因子数と血小板由来NO生成が有意な逆相関を示すことを確認した.本年度はHL患者で血小板由来NO生成が有意に低下していることを確認するとともに,同疾患の患者で血小板凝集が亢進していることを確認した.さらに,血小板の酸化ストレスの指標である血小板凝集時の血小板内ニトロチロシン量は同疾患患者で有意に高値であった.しかし,HL患者の内皮依存性血管拡張反応は健常者に比し有意差を認めるに至らなかった.HL症患者に対するHMG-CoA還元酵素阻害薬であるフルバスタチン(20mg/day x 3 months)投与は,血小板由来NO生成を改善すると同時に亢進した血小板凝集を抑制し,血小板内ニトロチロシン量を減少させた.さらにフルバスタチン投与は,内皮依存性血管拡張反応を健常者以上に改善させた.また,フルバスタチンによる血小板由来NO生成増強と内皮依存性血管拡張反応の改善度は優位な相関を示した.これらの結果より,HLの易血栓性の原因として酸化ストレスを介した血小板由来NO生成低下が関与している可能性が示唆された.また,フルバスタチンはコレステロール低下作用のみならず酸化ストレス抑制作用を介して血小板由来NO生成および内皮機能を改善し抗血栓性を示すことが示唆された.
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