研究概要 |
TGF-β1は潜在型で細胞外に放出された後、プラスミンにより成熟型となりその作用を発揮する。またリポタンパク(a)[Lp(a)]が動脈硬化への機序として、抗プラスミン作用によるTGF-β1の活性化抑制が関与していることが示唆されている。血液透析患者の動脈硬化症の進展について、TGF-β1との関連について報告してきた(J Am Soc Nephrol 11:1889-1895,2000)。その結果血液透析患者ではLp(a)は主要な動脈硬化促進物質であるが、その作用がTGF-β1の活性化抑制に伴うものかについては明らかとはならなかった。 ・抗酸化剤投与とTGF-β活性化率及び動脈硬化 透析療法による酸化的ストレスに対して、抗酸化薬であるvitamin C,E投与によって軽減され動脈硬化予防に有効かを検討するため、透析患者51名をvitamin C,E投与群、非投与群において、動脈硬化病変とTGF-β1活性化率、Lp(a)濃度と併せて検討した。血漿Lp(a)濃度、血漿TGF-β1(total及びmature)は固相酵素結合免疫測定法(ELISA)を用いて、Lp(a)は免疫比濁法(LIA)を用いて測定した。また内皮依存性血管拡張反応を用いて動脈硬化への影響を検討した。抗酸化剤によるLp(a)濃度低下作用は認められているが、total及びmature TGF-β1濃度及び活性化率への影響は直接的には認められていない。現在動脈硬化への影響を内皮依存性血管拡張反応にて検討中であるが、抗酸化剤投与群において内皮機能の改善がみられる傾向を示している。また、vitamin C,Eの必用投与量や投与期間をについても検討中である。
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