研究概要 |
近年、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)は造血幹細胞移植において血球の正着不全との関係が報告されている。これに対し、私達はHHV-6がin vitroで血球3系統の造血前駆細胞の増殖をいずれも直接抑制することをメチルセルロースコロニーアッセイ法を用いて示してきた(J.Med Virol,1997;J Gen Virol,2000)。そこで今回、造血前駆細胞が多く含むとされるCD34陽性細胞群に対するHHV-6の作用を検討し、以下の結果を得た。 1.臍帯血単核球からDynal,MACSという2種類の異なる磁気ビーズを用いてCD34陽性細胞を分離した。その結果、Dynal分離CD34陽性細胞群:CD34+(Dynal)ではCD34抗原の発現がdimからbrightまでの細胞が混在する細胞群が得られたのに対し、MACS分離CD34陽性細胞群:CD34+(MACS)ではCD34抗原の発現がbrightの細胞のみが存在する細胞群が得られた。 2.それぞれの細胞群に対するHHV-6の作用を調べたところ、HHV-6はCD34+(Dynal)から形成される造血コロニーを抑制するのに対し、CD34+(MACS)から形成される造血コロニーは抑制しなかった。 3.CD34+(MACS)を造血因子添加液体培地で3あるいは7日間培養後、CD34抗原の発現を調べると、CD34+(Dynal)同様にdimからbrightまでの細胞が混在する細胞群が得られた。これらの細胞群に対し、HHV-6の作用を調べたところ、HHV-6は数日間液体培養後のCD34+(MACS)から形成される造血コロニーを抑制した。 以上より、HHV-6はCD34陽性細胞の中でも幾分分化した細胞群をターゲットとして造血コロニー形成を抑制していると推察された。
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