研究概要 |
(背景):幼若脳も成熟脳と同様にてんかん重積症に脆弱である事が示されているが(Sankar,J Neurosci,18:8382,1998)、幼若期重積症モデルによっては成熟後のてんかん原性獲得の頻度が異なることも判明している(Sankar,Ann Neurol,48:580,2000)。今回我々は、てんかん原性獲得を高頻度に来すてんかん重積モデルであるリチウム・ピロカルピン投与幼若ラットを用いて、脆弱神経細胞に主に発現する神経ペプチドであるソマトスタチン(SS)、ニューロペプチドY(NPY)、抵抗性神経細胞に発現するカルシウム結合蛋白パーバルブミン(PRV)の重積後の経時的発現変化を検討した。(方法):日齢21のウィスターラットに塩化リチウムを前投与、さらにピロカルピンを投与して、間代性てんかん重積症を誘発した。3,6,24時間後にペントバルビタールにて全身麻酔し、ホルマリン・リン酸緩衝液にて脳灌流固定を行った。30%シュクロース加リン酸緩衝液に48時間浸漬させ、ミクロトームにて凍結切片を作成した。さらに浮遊切片法を用いて免疫組織化学的に上記3種の発現を検討した。(結果):1)海馬歯状門におけるSS,NPY発現は6,24時間後に減少した。2)CA3錐体細胞層にて24時間後にSSは新規発現したが、NPYの発現は認めなかった。3)歯状門・CA3におけるPRV発現は24時間後も維持されたが、CA1にて減少し他の領域での新規発現は認めなかった。(結論):幼若脳では、てんかん重積症後SSの新規発現が同細胞における神経保護作用をもたらす可能性があるのに対して、PRVは含有細胞以外の新規発現を認めず、PRVの障害耐性の役割は含有細胞のみに限定するものと考えられる。
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