研究概要 |
研究課題の対象疾患である角膜変性を伴う先天性遺伝性脱毛症では,遺伝形式が明らかにされていなかった。しかし,今回の家系の病理遺伝子解析によって,常染色体優性の遺伝疾患であることが強く示唆された。 臨床的に健常と思われる部位と角化性の変化を起こしている病変部位との超微形態学的構造を詳細に観察した。その結果病院に大きく関連することが予想されたデスモゾームの形態は,健常部と思われる部位では,大きな変化はなかった。しかしながら,角化性の病変においては,著しい海面状変性が認められ超微形態学的に破壊されたデスモゾームが数多く散見された。この所見から,通常は正常に近い形態をとるが,軽微な炎症性病変で容易に正常構造が破壊されるような脆弱なデスモゾームを形成してしまう疾患であることが予想された。デスモゾーム関連蛋白であるデスモグレインやプラコグロビンなど古典的表皮角化細胞間結合物質の分布は,健常人と変わらなかった。 この研究で得られた,臨床病変と超微形態学的研究は,Br J Dermatol 2000;142:157-62.に新しい知見として報告された。 さらに,普遍的な細胞間接着分子の発現を検討したところ,E-cadherinの発現が健常人と異なることを見いだした。細胞間接着分子の発現異常が,角化異常をもたらすことがあることは,少数の他の角化症でも最近解明されてきている。本疾患での角化異常の詳細を検討するため基礎的実験として培養表皮角化細胞での角化関連蛋白の発現を検討した。その結果,角化関連蛋白のひとつであるannexin Iは,Ca刺激,およびTPA刺激にて増強することが確認された。 この成果は,Arch Dermatol Res 2000;292:496-499.に新しい知見として報告された。
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