研究概要 |
色素性乾皮症(XP)は遺伝的に異なる8群に分類されるが各々、皮膚癌や神経症状の頻度や重症度が異なるため早期確定診断を行うことは臨床上重要である。これまでのXP診断は、患者皮膚由来の線維芽細胞の紫外線(UV)照射後の不定期DNA合成能(UDS)測定、紫外線感受性試験、既知のXP細胞と融合させた患者細胞のUDSを調べる相補性試験でなされていたが、手技が煩雑で時間がかかる,稀少な既知のXP細胞が常に必要であるなどの欠点があり、ひとつの施設で多数の検体を取扱うことは困難であった。近年、XPの全ての群の原因遺伝子が同定され、我々はそれらの発現ベクターを全て入手した。XP各群(バリアント以外)の発現ベクターを患者細胞に遺伝子導入することで同細胞のDNA修復能が相補されるかどうかを、あらかじめUV照射して細胞内に導入したレポータープラスミドの回復の程度(宿主細胞回復)でみれば、XPの正確な群決定が短期間で可能となる。本研究の目的は、このシステムを利用して、諸外国に比べて患者数の多いXPの新しい診断システムを本邦において構築し,臨床応用することである.昨年度は、既知のXP細胞(SV40トランスフォーム細胞、初代培養細胞)に、各群XPの発現ベクターと宿主細胞回復能の指標であるCAT(chloramphenicol acetyltransferase)発現ベクターを同時に遺伝子導入することにより、これまで数カ月を要していたXPの確定診断が、本法により短期間で、簡単、確実に行われる可能性を示唆した。本年度は、同法をXPが疑われる新しい患者に応用し、彼らの皮膚由来線維芽細胞の初代培養株を利用して数例の新しいXP患者の確定診断(A,C,F,G群)に成功した。
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